年を大幅にごまかすのは、詐欺にあたるのだろうか?
それって警察に捕まるの?
むしろつかまったら私は世間の大笑い者?
…………29歳の私が何故か17歳の高校生として学校に行きます。
どうして?
それはトリップしているからです。
…………あらそう。なんて言えるわけあるかぁぁぁぁぁ!!!!
とりあえず、安心したいので、あるかどうか分からないけど住民票をもらってこよう。
せめて身体は29歳でも、データ上17歳なら安心だ。
警察に捕まるわけにはいかない!!
犯罪者になったなんて友人から知られたら、絶対に腹抱えて大笑いされる。
その屈辱だけは避けなければ!
6.知っているけど、はじめまして
洋服はなんだか大人っぽいのが多いかも。
でも17歳のお洋服なんて買えないし、知らない。
化粧なんていまどきの子してるよね?
私薄化粧だけでもさせていただけないと、お外歩けないよ!!
まぁ、今の子は多少の化粧はしてるよね? 立海って校則厳しかったかな?
口紅はつけなくても、薄化粧だけはなんとかさせて。
もう染みもそばかすも怖い年なんだからね。
と、誰とも知れない相手に言ってみよう。
それはいいけど、冷蔵庫の中身はない。
洋服も欲しい。
一応お金はあるけど、できるだけ節約を心がけないとね。
人生何があるか分からないから。
お気に入りのミュールをつかみ、チュニックとジーパンを着てマンションを出る。
気がめいることはしたくなかった。
だって明日は12歳もさばをよんで、高校生になるのだから。
年があまりにも違いすぎると、考え方も違うだろうからきっとストレス溜まるはず。
こぼれ出るため息は何度目か分からない。
今日一日だけでも、のんびり羽を伸ばそう。
右も左も分からないのに、私は意気揚々とマンションを出て歩き出した。
「さて…………下着も買った。本も買った。洋服もいいのがあったし。後は食料だけど。
これは帰りのスーパーでいいかなぁ」
両手の荷物はそれほ重くはなかったけど、それを持って歩き回ると結構疲れる。
「どこかでお茶でもするかなぁ」
と駅前で、考えているとふと目線に入ったものを見て絶句した。
…………なんで高校生それも女生徒が道端で座っているわけ?
胡坐かいてさぁ。
それって流行?
立海や氷帝の制服ではないけどさ。
女の子だよ?
パンツ見えそうだよ?
公共の場だよ?
駅前の道路に座るか? 普通?
昔私が高校生だった頃に、男がズボン下げだしたんだよねぇ。
あのみっともない格好はいまでもはやってるよね。それも女の子も見掛けるし。
私男の子の美尻が好きなの。あの上がった素敵なお尻が好きなの。
だからあの下げたズボン見ると、イライラして強制的に上げたくなるの!
高校生の常識って、今こんな感じなの?
あれが?
あまりにも無遠慮に見ていたので、彼女達は気がついたようだ。
「何?あんた」
…………そこ歩く人の迷惑になるとかまったく考えてないんだろうね。
「邪魔なんだけど、退いてもらえるかしら?」
にっこり穏やかに言ったつもりなんだけど、相手はそうとらえてないようだ。
だよね。だって嫌味も混ざってるもん。
おばさん入っているかもしれないけど、本当に見っともないよ。
「は? 何それ?」
剣呑な雰囲気になってきたけど、売られた喧嘩ならきっちり買ってやるよ?
しかし腕っ節に覚えはないから、口で。
5.6人の高校生から取り囲まれましたよ。私。
初体験だよ。と、この雰囲気に呑まれることなくのんびり構えてました。
「あんた何様?」
俺様って言ったらまずいかしら?と本気で思ったのだが、言わないのが懸命だろう。
でもいまどきの高校生に口で勝つには……えっと。
ちょっと考えていたら、私の肩を抱くようにして腕がにゅっと出てきた。
ん?
誰かに後ろから抱かれている?
「堪忍な。この子、綺麗な女の子のたちやし、そないな格好してたら悪い男に何ぞされるって心配してたから、
そないな風に言ったんや。
わるい子やないんやけど、言い方がぶっきらぼうやから悪くとらえられるけど、凄くええ子なんや。
ほんま、堪忍したって」
待て待て。
このボイスには聞き覚えあります。
言われた女の子達は何やら夢見る少女のように赤くなってますよ。
これってひょっとして、ひょっとですか?
…………立海だけでも勘弁してほしいのに。氷帝の出現ですか?
私多分生きている時に、何か悪いことしたんだろうね。
これがご褒美とかまったくもって思えないよ。むしろ拷問か嫌がらせ。
女の子達はうっとりしつつも、エロボイスには勝てないと踏んだのか、そそくさと退散した。
待て待て、こいつも連れて行け。お持ち帰りしろ。
「あんた無茶するな。ああいうのはほっとけばええんや」
解放された早々に説教だよ。忍足から説教されてるよ。私。
振り返ると、やはりかの有名な忍足侑士がいました。
はじめてではないけど、こんにちわって言ったほうがいいの!?
「何や? どうかしたんか?」
固まったままの私を訝しげに忍足は首を傾げる。
「いや…………なんて言うか。有難う?」
「疑問系かい」
「だって…………いや、私が感情的になっておりました。助けてくれて有難うございます」
ここは揉めずに、軽くお礼を言っていた方が無難だ。
そしてさっさと逃げる。
お辞儀をしてすばやくきびすを返すと、後ろから戸惑ったような声が聞こえたけど、無視だ。
そう、迷いは禁物である。
お茶したかったんだけど、こんなことなら家に帰った方がいいみたい。
急ぎ足で、自分のマンションに向かった。
途中、買い物をすることを思い出して、慌てて近くのスーパーに飛び込んだ。
「ん〜、今日何作ろう。面倒だからワンプレートにしようかな。オムライスとか
ドリアとか。でもドリアだとホワイトソース作らないとなぁ」
重い荷物と空っぽの籠を抱えて、真剣に鶏肉を見つめていた時、肩を軽く叩かれた。
誰だ?
訝しげに振り返ると、居てはいけない人物がそこに居た。
いや、居てもいいんだけど、居て欲しくない人物。
「いやぁ。めっちゃ偶然やな」
「…………」
「そないなあからさまに不本意な顔しなくてもええと思うけど。
自分正直やな。何ぞ不都合なことがあるとか?」
「いえ、何でもありませんよ」
ここは根性で誤魔化せ。
嫌な予感がするんだよ。
「今日は何を作るん?」
「何故それを言わなくてはならないんでしょうか?」
ここは我慢だ。我慢。
何とか感情を誤魔化すようにするのだけれど、どう聞いても大根役者のように棒読み口調だ。
しかし忍足は気にしない。
それどころかなんだか面白そうな顔をしている。
これってよくない兆候だよね。嫌な予感がすっごいするよ。
「思い出したんやけど。自分。昨日確かマンションにウエディングドレスで入ってきたやろ?
あれって仮装? それとも何ぞ理由があるとか?」
…………。
何でどうして忍足が私のウエディングドレス姿見てるのよ!?
何の悪夢?
「いえいえ。それは私ではありません」
証拠はない!
それは違うと言い続ければ私は無罪だ!
が、忍足がおもむろにポケットから見せた携帯には私の姿がばっちり映っていた。
ウエディングドレスって教会で着ているからいいのであって、何もないところで着てたら。
ただのコスプレなので妙に恥ずかしいなんてもんじゃなく。
かなり恥ずかしいよ!
それを忍足が写真で撮っているなんて。
「肖像権って知ってる!? 忍足侑士!!」
そんな恥ずかしい姿を見せないで!とばかりに大興奮で叫んだ。
コスプレ写真に我を忘れてしまった私は、重大なミスを犯した。
「あ…?」
「ん?」
…………あの時助けてもらった時に名前聞いておくべきだった。
どうやって誤魔化そう?
ってか忍足相手に誤魔化せるのか?
正式年齢29歳。
多分人生何度目かのピンチです。
ターニングポイントってやつですか?
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☆コメント
忍足登場です。
私には想像力というものが意外とないらしく。
彼を登場させてしまいました。関西弁なんて知らないよ。博多弁なら得意と思うけど…………。
とっとーと。と使う福岡人ですから(取ってるの?の意味)
なので変換機能のあるサイト様を使わせていただきました。
妙な関西弁にもなるので適当にこっちで修正してます。間違いがあったりニュアンスが違ったらごめんなさい。
彼、意外と出ます。書いてて話が出てきたので、次回も忍足オンリーで話を続けます。
シリアスあれだけ暗いので、こっちでギャグに巻き込まれてもらいます。
犠牲者第一号の名前をあげようかと(笑)
そしてこの胡坐女子高生は、帰宅途中で駅で見かけました。
確かに駅の敷地内だけどそれはどうかと。
汚いと思うし、おもいっきりど真ん中。
帰りのラッシュだろうと気にしない女子高生。
少しだけでも恥じらいと常識を持っていただけないものだろうかと思ってこっちに書いてみました。
これは年寄り臭いとかじゃなくて、普通の感覚だと思いますよ。
一昔前なら列車の中に、列車内で座り込まないって禁止マークなんて貼ってなかったよ。
これも時代かと思うと正直先行き不安です。
若いみなさまやめましょうね。
と、こんなところで年寄りの忠告を終わります。
2008.8.1