神奈川県ってどういうこと?
ここが神奈川県で、あの人たちが本物なら、私はどうなったってこと?
まさかこんな状態でここにきたって話なの?
冗談じゃない!
誰もが夢見ることなんて誰が決めた?
私は望んでなんかいなかった。
こんな状況なんかに。
絶対に私の柄じゃないって!!!
こんなの友人に知れたら笑われる!
4・正体
「たのも〜〜!!!」
逃げ出した場所に戻って、勢いよく練習場の扉を開いた。
びっくりしたような顔をした彼らをまじまじと見つめる。
こうやって改めて見るとやはり本物だと思ってしまうほど、彼らはそのまま本から飛び出してきたような顔立ちをしていた。
2度も練習を中断してしまった形になったのだから、副部長である真田の顔はどことなく険しい。
「部外者は立ち入り禁止だ!」
「まぁ、真田。俺は彼女に聞きたいことがあったし、戻ってきてくれて嬉しいよ。
何かあったみたいだね?」
含んだような物言いは、彼の性格をあらわしたようだ。
腹黒説は間違ってないのだろうか。
「慌てて飛び出してきたのに、また戻ってきたところを見ると俺らに何か聞きたいのであろう」
流石、マスターと呼ばれるだけあるね。正解だよ。
「私の名前は、。名前教えてくれる?」
「…………はぁ?」
わかめが怪訝そうな顔したけど、構うものか。
この状態で名乗りきった自分を褒めたい。
名を名乗れと叫ばなかっただけでもよしとしよう。
「幸村精市。こっちが真田弦一郎で、柳蓮二。ジャッカル桑原。丸井ブン太。柳生比呂士。仁王雅治。切原赤也」
幸村君が全部紹介してくれた。
…………そうか。やはりそうなのか。
「ところで幸村君。何年生?」
「高校二年生です」
うわぁ〜。私が知っているのは彼らが中学生の時の話だから微妙にずれてるわ。
「さんのお年を聞いていいですか?」
10以上も離れているなんて言いたくない。
あれ?待てよ?
お約束といえば、お約束な若返りってどうなのよ?
しかし鏡がないから顔が見れない。
小学校高学年になってからぴたっと止まった身長はそのままだろうから問題ないだろうけど。
「黙秘権使っていい?」
「…………人に色々聞いて黙秘権?」
うわぁ〜、すっごく黒いんですけど。この方。
いやいや、色々って聞いたのは名前と年だけじゃない。
「言いたくても言えないし、分からないのよ!多分もうちょっとしたら分かる!」
「はぁ?」
「ところで、今何月?」
「8月30日です」
これまた微妙な。だから暑いのね。
私が元の世界にいたときは5月だった。
「去り際に、あなたがコスプレとか言っていたのと何か関係が?」
そこを突くか。聞き逃しなんて簡単にしてくれないって事か。
「ん〜〜〜。正直、言いにくい」
「本当にわけの分からないやつだなぁ」
ブン太があきれたように言うけど、そう簡単に言えたら苦労しないっていうの!
困ったなぁとばかりに8人を見ながらため息をつく。
どうもこうもこれってやっぱりあれなわけよね?
パラレルワールドとかいうやつ?
今はネットでは夢小説とかで扱われている、トリップってやつだっけ?
そんな夢のようなことが自分に降りかかるのは何故だ?
そんな乙女チックなことはまったくもって考えてないよ!
そんなものに選ばれること自体が恥ずかしいよ。
新手の羞恥プレイですか!?
「分かった。どうも有難う」
こいつらと離れないと、まともに考えることもできないや。
ひとまず失礼と、きびすを返したのだが、ツンッとウエディングドレスを引っ張らたようで。
ズデンッとひっくり返ってしまった。
「なっ!!誰よ!って、ああぁぁぁ!ドレス汚れるじゃない!!」
純白に土がついたら絶対に取れにくいに決まってる。
半泣きで汚れたところを握り締めていたら、顔の前に手が差し伸べられた。
「?」
「悪気はなかったんじゃが。すまんな。立てるか、ほれ」
少しも悪びれた様子のない顔で、にっこり笑う詐欺師。
「有難う」
棒読みで彼の手をとると、面白そうに笑った。
「何?」
「いや、興味あるなと思ってな」
「私は興味ないよ。正直、かなり凹んでいるけどね。放してくれない?」
詐欺師とまともに話し合いできるほど、まったくもって落ち着いてない。
ぼろが出る前に帰ろう。
…………ってどこに?
家もない。多分ないであろう。
トリップしたら大体変な神がでてきて、使えきれないほどのお金をくれて、家を用意してくれるとか。
誰かの家に転がり込むとか。
そんなのが王道だよね?
いやだぁぁぁぁぁ。
そんなことしたくもない!!
私みんなが望むような、胸がきゅんきゅんして、恋しちゃいました。ラブ。
なんてことできないし!!!
柄じゃないし!!
第一、もうすぐ人妻だし!!
テニスの王子様は大好きだけど、大好きだけど、それはそれだろ?
「お前さん。そうは言っても一方的に話をしてはいさようならはないじゃろ?」
顔を赤くしたり青くしたりと一人百面相をしていたら、仁王がもっともなことを言ってきた。
「黙秘権を貫いていいですか。それにね、本当にイヤだけど。多分。多分。99%の確立で、多分。
君らと関わるんじゃないかな。」
お約束を考えたら多分そう。
しかしもしかしら例外もあるかもしれない。
ほら、出会ってさよなら〜って。
だってね、ほら、何度も言うようだけど物語の主人公って感じじゃないよ。私って。
もう年取りすぎだ。
彼らよりも実質10歳以上なんだよ?
相手にならない。というか、相手してもらいたくない。
これからは小金もちの旦那から養ってもらって、3食昼寝付きの生活を満喫しようと思ってたところなのよ。
専業主婦万歳状態の私なのに、トリップとかいうものはありえません!
むしろ、誰かにその権利あげるから帰してくれと叫びたいのだ。
「色々と訳ありって事だね。ふ〜ん」
ほらほら、ぐずぐずしてたから、立海の最強最悪(?)の部長様からも興味もたれてしまったよ!!
お約束?
「えっと…………」
どうにもこうにもならなかったら、言うよね?
ほら。
三十六計逃げるにしかずってさ。
え?知らない?今の若い子はことわざも知らないって言うの?
携帯に頼る時代だからなぁ。
ちょっとぐらい勉強しなさいよ。
意味はね、戦いに出て、ぐずぐずして時期を失うよりも、むしろ走り逃げて、後の方法を考えた方がいい。ってこと。
勉強になるでしょう?
ともかく、簡単に言うと。
逃げるが勝ちってね。
にこっと笑顔を唐突に振りまくと(はいはい。可愛くなくてごめんなさいね)
パンツが見える勢いで、ウエディングドレスを捲り上げた。
純情な少年達数名が顔を真っ赤にしてそらした。
数名は動じもしなかったけどね(けっ!)
その隙(?)に勢いよく逃げました。
全速力で逃げました。
正直あのウエディングドレス用のハイヒールでよく走れたと思います。
だって15センチ以上もあるのよ?
神業としかいいようがない。
想像するだけでげんなりする。
これから起こるであろう出来事に、まぁのたれ死なない程度に生き延びる予定だけど
とりあえず着替えたいから洋服どこかないかしら?
何度も言うようだけど、このウエディングドレス高いんだってば!!
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☆コメント
やっとやっと名前変換できました。
お名前変換ないとどうも違和感ありますよね?
ない?
主人公がやっとトリップしたことに気づきました。
後は家ですよねぇ。家。
それから年齢問題?
29歳の主人公が、高校生になるのかどうか。
それは次の更新にて分かると思います。多分。