自分から告白したのははじめての経験。
付き合ってなんて言うなんて。
もっと甘酸っぱいものだと思ってた。
ドキドキすることだって。
相手がまさかあの忍足とは思ってなかったけど。
それにしても甘酸っぱさやドキドキ感がまったくないっていうのはね。
だってしょうがないでしょ?
恋なんてしてないんだから。
18.恋人は忍足
こんなに間抜けな忍足の顔を見るのは初めてだな。多分。
鳩が豆鉄砲くらったような顔とでも言うのかな。
おかしな顔してるよ。
「付き合うって正気なんか?」
「何で?私と付き合うのが嫌なの?」
意外とおろおろしているように見えるのは気のせいかしら?
「いや、そのな。まだ俺らそんなに知り合って間もないやろ」
「意外〜。忍足でもそんな風に普通なこと言うんだ。だってあんたに告白してくる子ってほとんど知らない子じゃないの?」
「まぁ…そやけど」
でしょうね。
なんせあの氷帝の忍足だもん。
顔見知りではない、まったくの初対面だってバンバンと告白しに行くだろう。
それをどうこう言うのも可哀想なのかな。
そういう環境になったのは、なにも忍足だけが悪いわけじゃない。
それにそんな風だから、こうやって恋愛感覚がおかしくなったのだろう。
周りがこんな風に忍足の恋愛感覚を作っていたのだから。
それをあまり責めては可哀想かな。
「だからってそうやってさんと付き合うってのは」
渋い顔をして忍足が呟く。
何よ。
そんなに深刻に考えるほど私は魅力がないのかよ!
まぁ、あるとも思えないけどさ。自分に
「本気で付き合えって言ってないって……ちょっと、彼氏のふりしてくれって言うの。
忍足本気で好きな子って今いる?」
「本気で好きな子?」
質問に、険しい顔して考え込んでしまった。
ああ、こりゃ、いないな。
ってか本気で好きな子っていうのも今までいたのか? こいつに?
昔っからこんな風な環境でいたら、本気で好きな子ってできるんだろうか?
私もつい一緒に考え込んでしまった。
「いや、本気で好きな子がいるなら悪いかなぁとか思ったんだけど、その分じゃいないみたいだし。
ちょっとだけの間でいいから、彼氏のふりしてくれない? そうなると私的に大変助かるんだけど、どうかな?」
「無理」
……こいつ。
間髪いれず断ってきやがった。
「何よ!問題あるって言うの! 私と恋人同士になるのがそんなに不満!」
ふりだけなら何の問題もないじゃないよ!
「さんの背後がイヤだ」
……………。
そうね、そうだったわ。
それならしょうがないとか思っちゃうかもしれない。
だけど、だけど、こっちもその背後対策に必死なんだよ!
少しぐらい協力したっていいじゃないのよ。
「よし。条件を飲もう。どうやったら恋人のふりしてくれる?」
「…………条件って言われてもなぁ。思いつかへんけど」
「情報交換はなしだよ。それ以外ならなんでも」
「元々情報交換なんか求めやへん。氷帝がそんなちんけなことするはずがないやろ。
第一、俺のほうがリスクありまくりやろ。どこらへんにメリットがあるか教えてほしいぐらいや」
確かに。
リスクがあってもメリットないと思うよ。
私だったら即お断りするよね。
でも、それじゃぁ困る。
つーか、どう転んでも私の場合は、リスクありまくりだから他校に男がいるってした方がまだましなんだよ。
忍足には悪いけど、どうやっても彼氏になってもらう!!!
「桑原に頼んだ方がスムーズにいくやろ?」
「ダメ。ジャッカルをそんな危険な目にあわせられないってか、よく考えたんだけど、
意外とジャッカルお姉さま方に人気があるらしいのよ!!!立海のテニス部と付き合うとかなったら、
絶対に血の雨見るね。それなら忍足のほうがマシ!!!」
「かなり失礼なこと言ってるのが分かってんのかいな?」
「は?」
何か言った?とばかりに忍足見たら、かなり大げさにため息つかれた。
私何か悪いこと言ったけ?
もう一回忍足はため息をつくと、覚悟を決めたような顔をして言った。
「よし。分かった。彼氏の件引き受けた」
「本当に!!」
もうちょっとごねると思ったので、こんなに早く忍足が引き受けてくれるなんて思わなかったよ。
「ただし!」
あ、やっぱり条件があるんだね。
「何?」
「夕飯を俺の分も作ること。もちろん食費は渡す」
「え〜!!」
つまりは家政婦まがいなことをしろと。
「夕飯ぐらいひとりもふたりも変わらへんやろ」
「それはそうだけど……………」
面倒と言えば面倒。
それにいまからわけの分からない部活動した後で、夕食二人分って体力持つのかしら?
「多分かなり軽い条件と思うんやけど。どないする?」
……………。
……………。
くぅ〜〜。
仕方ない。
掃除まで求められてないなら、ご飯ぐらいしょうがない。
男との子だもんね。
きっと面倒なんだろう。
ここで拒否したら多分もう二度と忍足の彼女なんて立場になれない。
いや、なりたいわけじゃないけどね。
それでもなんか……………漫画で大人気だったキャラクターの偽の彼女でも。
なんかワクワクしちゃうかも。
ふふふ。
なにか不気味な笑顔でもしたのだろうか。
忍足が妙な顔で私を見てた。
いかん!(いけないの博多弁)このまま忍足の気持ちが変わっては困る。
「分かった。ご飯でも何でも作ってあげようじゃないか。というわけで、今日から忍足は私の彼氏ね。OK?」
晴れやかな私の笑みとは対照的に。
忍足はなんともいえない笑みを浮かべ。
「…………ほな、よろしゅうな。俺の彼女さん」
と、一応は承諾してくれたのであった。
よし!!忍足ゲットだぜ!(こういう古いことを言うのが歳ってことだよねぇ。あはっ)
「じゃぁ、さっそく今からよろしゅう」
「……………は?」
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☆コメント
忍足はなんだか主役級の扱いになってます。
まぁ、設定上しょうがないのかもしれないけど。
次は立海かな?
でも、氷帝の帝王も出したい気分です。
早く立海になじんで、立海の人と恋なんぞをさせたいです。
普通の恋ではないでしょうが。
さて、テニス部って何するんだっけ?