29歳って若いって思ってたけど、そうじゃないのか?
何?
20歳になったらおばさんなわけ?
十代から見れば、そりゃ、肌はぴちぴちでなくて。
化粧水に乳液は手放せないアイテムだけどさ。
それでも、そこらへんの小娘には負けないつもりだったけど。
やはり何と言っても十代。
その十代に30代大台に乗ろうという私が勝つなんてことはできないのか!
はぁ〜。
何でこんなところにきちゃったのかな。私。
テニプリの世界に行きたいって願ったことないよ。(魔法の世界の方が楽しそうだとは思ったけどさ)
いや、本当。
こんな世界にくるぐらいだったら、きっと結婚生活の方がまだましだったと思う。
うん…………。
多分ね。
17.自業自得?
何かが急激に身体を押し上げるような感覚に陥る。
眩しいほどの光がまぶたの裏に広がって、ぱちりと目が覚めた。
…………あれ?
ここどこ?
一瞬、自分の置かれた状況がよく分からなかった。
ぐるりと周りを見回すと、誰かの部屋だ。
覚えのない匂い。
覚えのない部屋。
ふと、自分が意識を飛ばした前の記憶が甦る。
ジャッカルが、たしか助けにきてくれたんだよね。
それから?
それから…………何も記憶にない。
ここはどこなのか、部屋をよく見回そうと身体を起こしたら、タイミングよく部屋のドアがあいた。
「ああ、起きた?」
…………。
うん。
あれ?
何でここにあなたがいるんだろう?
私、立海で倒れてジャッカルに助けられたよね?
「何で、忍足がここにいるの?」
「話せばなごなるんやけどな。さんの引き取り手が誰も見つからなかったから、幸村がこっちに連絡よこしてきよった」
うわぁ〜。幸村から電話があったのか。
それは断りきれなかったんだろうな。
「おかげで、部活は途中で抜け出してきたし、跡部に説明もできへんかったし。俺、明日どないしようかなぁって状態」
「ごめん。不可抗力だったんだよ!!」
まさかこんなところで忍足に迷惑をかけるとは。
「不可抗力ねぇ〜。しかも幸村の話ではマネージャーになりよったんだって?」
「うん。断ろうと全力はつくしたんだよ!でもさ、あの幸村に詰め寄られるのを一度体験してみるといいよ!
絶対に無理だから!!!」
忍足は少し遠い目をしながら、何故か素直に頷いた。
「幸村に目をつけられるとは、さんこれからの立海生活大変やなぁ。それに俺との恋人説もあるしな」
だろう。
よく分かってるじゃない。忍足。
私の立海生活かなり大変そうだってよく理解してくれてるじゃないの!!!
って!
「忍足〜!?今、あんた何って言った?」
聞き逃せない言葉があった。
嘘だと思うけど、嘘だと思いたいけど。
「俺との恋人説かいな?」
「はぁ〜?」
待て待て待て。
何?
何がどうなってそういうことになってるの?
「恋人説って何?」
「何って、そうやろ。俺も確かに軽率やったと思うけどな。やっぱり今時の女子高生は侮れへんな」
今時のって何?
「朝のことが携帯メールでどんどん流れてなぁ。しかも写真付やで。俺とさんの。立海から氷帝に。
お陰さまでガールフレンドからストレートパンチで殴られてん」
確かに。忍足の頬が赤く腫れているっぽい。
…………あれ?
私って氷帝と立海の女の子達を敵に回した???
「マジで!!!!」
さすがにそれは衝撃的な内容に口をあんぐりあけたまま固まった。
「岳人からもそれは誰やって聞かれるし、跡部は跡部で説明しろや的な顔で見られるし。
そんな時に立海のそれも幸村からの直々の電話やねん。こりゃもう、決定的っていうか、どこをどうやって誤解だと解いてええのやら」
すでに諦めモードの忍足は乾いた笑いでわはははと呟きながらうつ状態の人みたいな行動を起こしている。
「いやいや、それはストレートに誤解ですって言おうよ!むしろ違うって否定しようよ。そんでもって彼女に土下座しろ!!」
「もうすでに遅すぎると思うんやけどな」
「あんた馬鹿!? そんなこと言ってたら、マジでやばいじゃないのよ! 私、一応立海のテニス部マネージャーなんだよ?」
「そういや、幸村が言っとった。付き合ってもいいけど、情報交換だけは絶対に許さへんって」
「…………終わった。私の青春終わった。…………もう終わってるけど、なんか全部終わった」
立ち直れない。
このままどこか遠くに旅立ちたいよ!!
あーとかがーとか叫びながら、とりあえず近くにある枕に八つ当たりをしてみた。
「そこ俺のベットなんやけど」
忍足が一応止めてくれるけど、そんな人事のような顔してもっと深刻になんなさいって言うのよ!!
あんた振られたのよ。
彼女から!
まったくもって誤解なのに。
「まぁ、そろそろ潮時かなぁって思ってたしな」
心の叫びは何故か口にしていたようで、忍足がそれについて答えてきた。
「潮時? 潮時って何なのさ? あんた17そこそこで男女の付き合いをそこまで軽く考えるの?」
うわぁ。
だからもてる男ってどっかおかしいんだよ。
そうじゃなくて、テニプリ世界がおかしいのか?
潮時なんてもっと大人になって使いなさいよ。
ってか、そんな潮時って思ってた時に現れた私って、ただの都合のいい女じゃないのよ!
そんなわけの分からない嫉妬されるなんてありえない。
氷帝なんかに目をつけられるなんて冗談じゃない。
立海だけで手がいっぱいっていうのに!!!
「まぁ、なるようにしかならへんし。落ち着いたらどうや?」
人がこんなに悩んでるのに、なんでこの人はこんなに落ち着いてるんだよ!!
なるようにしかならんってどうなるってんだよ!!!
「あんたと付き合ってるって言われるなら、ジャッカルのほうがまし!!!」
ジャッカルならなんとかなる!(超失礼だ)
きっと適当に付き合ってくれそうだよ。
ブン太の面倒も見る、青学の大石的な存在なんだから。
「失礼な姫さんやな。あんた」
まさか自分が振られるとはなんていう顔してるのが分かったよ。
あんたもてるってやっぱりちゃんと自覚してるね?
それからもてるから多少の自信があるようだね?
おあいにく様。世の中全部美形になびくなんてことはないのよ!!!!!
いや、待てよ。
もう忍足との恋人説が流れているとなれば、今更ジャッカルと隠れ蓑で付き合おうなんてばればれじゃない?
むしろ、こいつなにやってんの?って逆に反感買う?
…………私は立海。
忍足、氷帝。
………………………………。
………………………………。
………………………………。
………………………………。
………………………………。
「よし、百歩譲って我慢する。忍足。私と付き合って」
「はっ?」
唐突に言った言葉に、忍足は今まで見たこともないような間抜けな顔をした。
戻る 次へ
☆コメント
長々続きかけてなくてすみません。
なんだか忍足が妙に出張ってきたな。
脇役ナンバー1になってるぞ?
2009.5.5