つまりこういうわけですか?
クラスメイトは幸村の性格も外面も分かっているので、テニス部に憧れは抱いていないと。
それに他の部員はカッコいいけど、幸村とお近づきになりたくないので外から眺めているほうがいいと。
そしてテニス部マネージャーなんて死んでもなりたくないと。
…………。
で、私が転入してくる前に、このクラスからマネージャー選出されそうになってかなり大騒ぎしていたと。
そこへ私が転入してきた。
彼ら、彼女らは瞬時に思った。
『生け贄』がきたと。
何?
つまり私はテニス部への生け贄にすでに選ばれていたということですか?
幸村が私に笑いかけただけで決定していたということですか?
だから誰も幸村に異議を唱えなかったのですか!?
…………やられた。
15.テニス部マネージャー決定か?
「このクラスって何なの?」
呟きを誰に聞かせるわけでもなかったけど、それに答えた男がいた。
言わずもがななあの人である。
「普通だと思うよ。マネージャー」
だからマネージャーになることを決めたなんて一言も言ってない!
そう叫びたいのに、横に座ってにっこり笑うあの男に否定できる勇気はない。
黒属性だ。
もう真っ黒!
何?
この同人要素たっぷりな幸村。
原作の幸村は黒っぽいけど、常識人と思っていたよ。
「もっと私よりこのクラスよりマネージャーになりたい人なんて腐るほどいたんじゃないの?」
別にクラスメイトからマネージャーを決めるなんて規則ないだろう。
今からでも遅くない。
公募すればいい。
それなら大量のマネージャー候補が釣れるだろう。
「それは駄目なんだ」
「何で? 私はやりたくないって言ってるの。で、やりたいと言ってる子もいるんでしょう?」
このクラスが駄目だとしても、他のクラスや他の学年は同じとは限らない。
むしろ、テニス部とお近づきになりたいと申し出る子は腐るほどいるはずだ。
「名前だけね。そんなのは必要ないから」
幸村もどんな子がくるのか分かっているのだろう、私の意見をあっさり跳ね除ける。
ってか、この世界はテニプリ漫画だけあって、テニス部美形!って数式がかなり凄いよね。
モテモテっぷりが激しいよ。
多分氷帝も同じようなんだろうな。
だからみんなから忍足侑士との関係を聞かれるんだ。
クラスメイトにも友達説を流したけど、いまいち信じてないようだし。
まぁ、最初のベンツで乗りつけした時点でおかしいしね。
忍足侑士の渾身の笑みをいただいた私が、忍足と無関係だと言い張る方が変だ。
忍足をからかうんじゃなかったな。
ちょっとだけ反省。
「あのさ〜、私マネージャーに向いてないと思うよ。スコアなんてつけれないし。
ドリンクは入れられても、重いものは持ちたくないし。日焼けしたくないし、無報酬なんて考えられない。
テニスなんて興味ないし、多分試合中に寝る。土日は寝ていたい」
「ふ〜ん」
にっこり微笑みこちらを見る幸村。
更に続けてみた。
「他校のテニス部は興味あるけど、興味ある程度で別に会えないなら会えなくても構わないし。
足腰弱いから走るのは多分無理。機敏に動けない。それに本が好きだから放課後は本が読みたいし、ネットもしたい。
一人暮らしだから買い物や掃除もあるし…………」
言葉を止めて幸村を見る。
幸村は笑っていた。
…………口元だけが。
「で?」
続きを促してくるが、とてもじゃないけど言える雰囲気ではない。
「それから?」
更に促してくる。
あ〜〜。うん。
え〜〜っと、逃げ道を探してみた。
さりげなく目線を左右に動かすが、どうも逃げられる位置ではない。
「だからね。多分テニス部には向いてないと思うのよ。幸村君が推薦してくれたけど、それはとんだ間違いって…………」
どっかで間違った!!!
選択肢間違った!!
どこか分からないけど、多分絶対選択間違った!
リセットボタン!!
ドキドキサバイバルだったら、絶対に振られてる。
いや、振られてもいいんだよ!!
付き合いたくないんだから。
上手な断り方ってなかった?
すでに頭の中がパニックになってます。
「」
「はい!!!」
呼び方が呼び捨てなのはもうどうでもいい些細なことだ。
命が危ない!
「テニス部に向いている向いてないはやってみてから考えたらどうかな?」
静かに静かにそれはとてもおだやかな風が吹くように幸村は言った。
多分これが嵐の前の静けさとでも言うのだろうか。
もしこれを完全に跳ね除けたら、私の命は保障できない。
固まる私の前に、幸村は静かに紙を差し出してきた。
あれ?
これってよくある営業がやるテクニックじゃない?
考える間を与えずにはんこを押させるやつ。
その紙にはちゃんと書いてました。
入部届
「クーリングオフはきくのかなぁ?」
力なくその紙を持ったまま言ってみた。
「多分」
その言葉が本当であるわけがない。
でも私にこの紙を拒否できる力も度胸もなかった。
転入初日にしてテニス部マネージャーという地位をいただきました。
誰か嘘だと言ってくれ!
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☆コメント
何だかダラダラと続けましたが、テニス部マネになりました。
おめでとう!
ってギャグ書く力をなくした気がする。
シリアス続きでどうも調子が悪いのか。
2009.2.11