さっきまでは確実にジャッカルがいた。
間違いなくジャッカルだった。
だってこっちをおびえたような、狂犬を見るような目で私を見てたから、絶対に間違いない。
だからこっちもジャッカルがちゃんと座っているものとして考えたのよ。
って言うか、そもそもジャッカルじゃないこと時点がおかしい。
ジャッカルの席だからジャッカルが座っているのは当然でしょう。
なのに、なんでジャッカルじゃないのよ!?
ジャッカルでしょ!
そこの席は誰が何と言おうとも、ジャッカルの席でしょう!
幸村の席じゃないはず!
なのにどうしてこうやってジャッカルとすり替わっているわけ?
誰も何も言わなかったし、前兆さえも感じさせなかったわよ。
ちょっと、どうしてあんたが座ってるのよ!
11.未知との遭遇ですよ。幸村さん!!(注意;UFOじゃありません!)
ガターンッと椅子をなぎ倒して立ち上がった私に、教師が驚いた顔をする。
「どうした? ?」
にこにこして平然とこちらを見ている幸村なんかに気づきもしない。
それにクラスメイトもジャッカルとチェンジしている幸村に突っ込もうとさえしない。
何故?
だって突然席変えてたらおかしいよね。
むしろいつ変わったんだよって言いたい。
授業がはじまった時は、ジャッカルが席に座っていたのはちゃんと確認しているんだから。
なのになんで突然幸村に変わってるのよ?
ジャッカルの方を睨んでみると、彼は教科書で顔を隠している。
このやろう…………。
「?」
教師はますます怪訝な顔をする。
いや、だから私の隣の彼を見ろよ。
ついでに席について突っ込もうよ!
「あ…………いえ、前の学校とかなり違っていたので、思わず。すみませんでした。続けてください」
本当は文句をタラタラ言ってやりたい。
できることなら、ジャッカルの首を絞めて、ジャッカルを幸村に投げ飛ばしたい。
精一杯の睨みをきかせて、ジャッカルに怒りのオーラを向けると益々顔色を悪くする。
しかしあの茶色だと顔色なんて微妙にしか分からないものだ。
おとなしく座りなおし、幸村の方をこっそり教科書の間から盗み見ると、本人はこっちを堂々と見て笑っている。
余裕だな。おい。
このまま席がこんな状態だったらどうしよう。
私、立海テニス部には近づかないってさっき誓ったばっかりなのに!!
教科書で顔を隠して、なんとか幸村から逃げようとしたのだが、視線がこっちを向いているのを感じられずにはいられなかった。
絶対にこっちを見ているよ。
一時間目でうんざりするほど重い空気を味わいながらなんとか乗り切った。
でもまぁ、これからが勝負なんだろうけど。
「ねぇ。さん」
きたよ!
きた。きた。魔王様のお言葉が!
「な、何ですかね? 幸村君?」
「昼休み暇かな?」
「暇じゃないです!まったく」
地獄へのご招待?
何のために呼び出すわけですか?
幸村のご招待を、考える間もなく拒否した私を、クラスメイトは固唾を呑んで見守っている。
ちょっと、ちょっと、ここは転校生を囲んで質問攻めが普通でしょう。
何で幸村が傍にいるだけで誰も傍に来ないわけ!?
幸村ってこのクラスのどんなポジションなわけ?
どうして誰も何も言わないの?
「そう。暇なんだ」
にっこり笑みを浮かべて、こっちを見る幸村。
私きっぱりはっきり断りましたよね?
暇じゃないってさ。
こいつ一体…………。
「幸村」
そんな私の切羽詰った状態を救ってくれたのは、なんと真田だった。
「お前の席はそこだったか?」
眉を寄せて口を開く真田。
え?何?
考えないと分からないわけか?
それってボケ?マジ?
「元からここだったよ、真田」
にっこり笑顔で嘘を言う幸村。
いやいや、あんたの席は今ジャッカルが座っている場所だろ!
そこはジャッカルの席だ!
「そうか?」
さ〜な〜だ〜〜!
お前はなんでそこで納得するんだ?
どう考えもおかしいだろう。
そこはジャッカル!誰が何を言おうともジャッカルの席だ!!
「しかし、そこは確かジャッカルの席だったと思うのだが」
思うのじゃなくて、ジャッカルの席なの!
誰が何を言おうとジャッカルなんだ!
お前の目は節穴か!!!!!!!
考えながら、ふと私に目を向けた真田がビクッと身体を震わせた。
何?
何なのよ?
「真田。ここは元から俺の席だよね? ねぇ、みんな」
うわ!汚い!
真田に聞くとみせかけて、クラスメイトに聞くなんて反則だ!!
そしてクラスメイトはみんな首を縦に振ってるよ。
一寸の乱れもなく首を縦に振っているよ。
何ですか。この状況は…………。
幸村帝国?
真田はそれ以上言えずに、唸っていた。
この役立たず!!!
「で、さん。昼休み話があるんだけど、いいかな?」
笑顔でにっこり笑う幸村は、この上なく不気味でした。
絶対に絶対に普通のお誘いではないと断言できる。
首を無駄に左右に振り回したけど。
「そう。昼休みが楽しみだね」
と、一言言って授業の準備をし始めました。
って、いつの間に席の中にも幸村の教科書が普通に入っているわけ?
そこはさっきまでジャッカルってマジックで大きく書かれた教科書の数々が入っていたはずだけど!!
ジャッカル!!!
鬼のような形相で振り返ってやると、奴は席の下に何故か避難してやがってました。
こいつは!!!!!!!!!!!!!
昼休みがとっても楽しみです(棒読み)
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☆コメント
なんていいますか、多分私がジャッカルを書きたかったからだと思われます(笑)
ずっとジャッカルと打ってたら愛着が湧いてきました。
可哀想なポジションですが、やっぱりおいしいと思ってしまいます。
楽しいなぁ〜と一人でジャッカル祭りしてましたよ。
次回は昼休みですよ。もちろん立海メンバー全員出る予定です。
2008.11.25