小説や漫画を読むのは大好き。
昔からずっとずっと好きだった。
それは大人になっても変わらない。
いい年してと誰に言われようが、私はその世界が大好きだった。
だけど、ねぇ?
こんなこと一つも望んでなんかなかったよ。
望んでたとしても、叶えてなんてほしくなかった。
だって戻れなくなる。
現にそう、戻りたくないって思ってる。
あなたたちと過ごしたキラキラした宝物を、手のひらにずっとずっと閉じ込めておきたくて。
私はいもしないはずの神様に願う。
愛してもいない人と結婚するために誓うはずだった言葉を飲み込んで、ずっとここに居たいって。
彼らと一緒に居たいって、心から願う。
それは無理だと分かっていながら。


1、ウエディングベル

年を重ねるごとになる、気になる結婚という文字。
焦っているわけではない(決して)
付き合っている人がいるわけでもないし、好きな人がいるわけでもない。
結婚に願望があるかと言われたら、特にないと答えられる。
29歳という微妙な年頃になれば、友人達はほとんど結婚しているし、子供だって産んでいる。
友人達の話は、結婚当初と比べるとかなりかわる。
幸せ。毎日ばら色から。
私達はお手伝いさんじゃない!!とか。
旦那が子育てに協力してくれないとか。
お姑さんとうまくいかないとか。
まぁ、俗にいう結婚してからの苦労話を未婚の私は気楽でいいわねぇとばかりに延々と愚痴られる。
こっちの身にもなってほしい。
まぁ、そんな話を聞かされたら、苦労してまで無理して結婚しなくてもいいかなぁとか思ってしまうけれど。
本当にふと。
少しだけ思ってしまう。
将来たった一人でいいのかって。
結婚もせず、子供も産まず、兄弟はいないし、両親は先に亡くなって、周りは私だけっていう状況になった時。
私は寂しいと思わない?
一人は気楽と今のように思っていける?
そう考えると不安になる。
だけど、私だって伊達に年を重ねてきたわけじゃない。
分かっている。
愛だけではおいしいご飯が食べられないって事は。
顔がいいだけの相手じゃだめ。
性格がいいだけって相手じゃだめ。
だったら誰がいいかって?
そんなの決まっている。
少しの優しさと小金もち!!!!!
愛だけじゃぁ、生活なんてできないもん。
ということで、私お見合いというものをしてきました。
相手は一つ年上の男性。
名前は…………。
えっと?
あれ?
全部親任せだったからうろ覚えだ。
…………見合いしてすぐ結納だったからな。
大企業のバリバリ働く会社員としか覚えてないや。あははは。
山田とか言う簡単な名前じゃなかったのは確かだ!
相手も忙しい人らしくて、ほとんど親任せっぽかったし。
もし私以外の人と見合いしてもOKしたかもしれないなぁ。
まぁ、私も人のこと言えないからおあいこだね。
とりあえずえっと…………そうそう。
結婚することになりました。
展開が早いってわけじゃなくて、今しみじみと思い出しているわけ。
だって今日が結婚式なんだから。
ウエディングドレスだけは私が決めさせていただきました。
背が150ほどしかないから、マーメイド系は断念したし。
シンプルなものもやめた。
顔が童顔だし、背が小さいのを考えて、可愛らしいふわふわしたドレスを選んだ。
結婚という実感がほとんどないけど、これを着て化粧を丹念にし、ブーケを持ったらイヤでも実感してしまう。
今日結婚するんだぁって。
名前も顔もうろ覚えの人に嫁ぐって、今の人から見てどうなのかしら?
顔は悪くなかったよ。確か。
だって結納なんて半年前にあってそれから一度たりとも会ってないんだよ?
うちの親、本当に結婚する気があるのか首傾げてたし。いまさら辞めるなんて私が言わないかって心配もされたな。
それをカモフラージュするために、電話とメールはしているって嘘言ってたっけ。
私も相手がいつ辞めると言って来ないかハラハラしていたのは確かだけど。
そんな淡白な相手同士が結婚って凄いなぁと人事のように思ってますよ。私。
友達からどんな人?って言われて、普通としか答えられなかった私が結婚するんだよ。
世の中間違っているよ。うんうん。
でももう引き返せないところまできているのは確かだ。
相手も今頃キャンセルしないだろう。
無事に結婚生活を送れるのかが一番の問題だなぁ。
結婚したら相手の用意した家に入って結婚生活。
料理は得意だから大丈夫。
洗濯や掃除もなんとかなる。
問題は…………夜のおつとめ?
…………大丈夫かなぁ。好きじゃない人とHなんてできるのか?
流されれば何とかなるか?ってかなんとかしないと駄目なんだよねぇ…………。
いっそ、死にそうなじいちゃんと結婚すれば…………それは無理だな。どう考えても。
悶々と考えたら頭痛くなったよ。
これから結婚式という新婦らしかぬ状態だ。
なんとかなるよ。大丈夫。
こうやって29年間生きてきたんだもん。
これからだって何とかなる。
愛してなくても、どうにかなると思う。
分かってて決めた結婚だから不安になんかなるもんか。

その時、扉の向こうから私を呼ぶ声がした。
壁にかかっている時計を見ると、そろそろ結婚式の時間だ。
チャペルが私を待っている。
よし!!と気合をいれてブーケを握りしめた。
これから起こるとんでもない事件を微塵も感じずに、私は新しい一歩のために力強く扉を開いた。
そして踏み出そうとした、第一歩を。
と…………目の前に広がる緑いっぱいの葉っぱを見て踏み出す一歩が宙で止まった。
「は?」
とてもじゃなけど、あほみたいにあけた口は、閉じることを知らないように開けっ放しだった。
扉の向こうはどう考えても、廊下でしょうが!
何で葉っぱなんだよ!木?
木なの?
はぁ?
瞬間。

ドン!!!!!

と、確かに誰かに思いっきり背中を押された。
悪意ある押し方と思ってもいいぐらいの力強さで押された。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

だから掴まるしかなかった。
目の前にある木々に。
絶対に落ちないようにしがみ付くしかなかった。
振り返ることなんてできない。
無常にも扉の閉まる音がした。
結婚式に木にぶら下がっている花嫁なんて聞いたことないんですが。
何かの余興ですか?
って、絶対に背中押したやつ見つける!!
そして土下座させてやる!!
その前に木からどうやって降りるかが大問題なんですが…………(たらり)

うわぁん!!!誰か助けやがれ〜〜〜〜!!!



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あとがき
すみません。なんていうか。
夢小説なのに主人公の名前がありませんね。
…………はい。面倒だったので伏せました。
だってちゃんと使いこなせるか心配だったの!!
次回はちゃんと名前でますよ。頑張ります!!
主人公の考えることを私もちょっとだけ考えたり(笑)実体験ではないですから!!
それにしてもずいぶん年齢の高い主人公ですが、申し訳ない。
キラキラの若い子はもう無理そうなので(考えがどうもおばさん臭いしね!)
次はちゃんと立海の人もでてきますのでお付き合いよろしくお願いします。
2008.6.8