置いて行かれる私から君へ


 置いて行かれる方の気持ちなんて知っているんだろうか?
 分かっているのだろうか?
 それとも、分かっているのにそうしたのだろうか?
 勝手だと私が言ったら、あなたは多分そうだねって言うんだろうね。
 そしたら、私がもう何も言えないって事を分かっていて、あなたは言うんだろうね。
 本当にずるい人だね。
 あなたは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 ずっとずっと好きだった。
 大好きだったから、あなたが私に告白してきた時は、信じられなかった。
 小さく頷く私を、あなたは嬉しそうにしていたね。



 初めてのデートは映画館。
 ごめん。繋いだ手が熱くて、映画の内容なんて覚えてない。
 せっかくの話題作だったのにね。
 だけど、あなたが映画の感想を求めてこなくて助かった。



 初めての口付けは。
 とても恥ずかしかった。
 あなたがあまりにも自然に口付けるから、びっくりしたんだけど。
 嬉しかった。
 あの時の空に広がる星たちが忘れられないよ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 あの時のことは、覚悟していたんだけど。
 恥ずかしかったし、痛かった。
 だけど、あなたと一つになれたことが嬉しくて、つい泣いてしまった。
 それをあなたは違う意味に捉えて、ちょっと慌てていたね。
 幸せだからって言ったら、あなたは嬉しそうに微笑んだね。
 私もつられて笑ってしまったよ。



 幸せだったよ。
 あなたといて。
 この幸せは永遠に続くものだと、勝手に信じていたよ。
 あまりにも幸せ過ぎて、だからかな?
 私は気がつかなかったよ。
 あなたがちょっと変だったのには、気づいてやれなかった。
 知った時は、頭の中が真っ白になった。
 言わなかったあなたが憎くて、それに気がつきもしなかった自分自身も、憎かった。
 声を出して泣く私に、あなたは困った顔をしていたね。
 どうやって慰めていいのか分からないなんて、バカ過ぎて呆れたよ。



 最後まであなたといるつもりだった。
 別れるつもりなんて、なかったよ。
 だけど、あなたがあまりにも私の想像通り別れの言葉を告げてきたから。
 怒って、泣いた。
 別れたくないって、駄々こねたね。
 その時の自分の顔分かってたのかなぁ?
 あなたがあまりにも泣きそうな顔するから、それを受け入れるしかなかったよ。



 忘れるつもりだったよ。
 あなたのこと。
 勝手に別れを告げて、去って行った相手のことを。
 だけど、それはできなかった。
 ずるいよね。
 私をこれだけ、捕らえたままで突然捨てるなんてさ。
 忘れようにも、忘れられない。
 それとも、それがあなたの戦略だったのかな?
 私に忘れて欲しくなかったの?
 私に覚えて欲しかったの?
 だったら、本当に勝手だよね。
 置いてかれる方の気持ち、まったく分かってないんだから。
 文句を言いに行ってもいいかな?
 会いたいよ。
 あなたに。
 どんな姿だろうが、会いたいよ。
 私はまだ、あなたに何も伝えてないんだから。
 あなたに会いに行きたい。



 私はそれから会いに行ったよ。
 あなたの両親は、私を簡単に君に会わせてくれたよ。
 あなた、私との関係言ってた?
 でも、いいや。許してあげる。
 おかげであなたに会えたんだから。



 あなたは目を閉じていたね。
 私は泣いてしまったよ。
 あなたの手を掴んで、泣いてしまった。
 あなたに会えた嬉さと、あなたを失ってしまう悲しさで。
 あなたは最後に私を感じてくれたのかな?
 私の声が聞こえたかな?
 あなたの目が少し開いたような気がしたよ。
 あなたの口が開いたような気がしたよ。
 私に何か言い残してくれるつもりだったのかな?
 愛してるなんて言葉?
 だったらちょっと、格好つけすぎだよ。
 さようならなんて言葉は嫌いだからね。
 ありがとうなんて言葉も聞いてあげないから。



 ねえ?
 あなたは幸せだった?
 私と出会えて、あなたは幸せだったのかな?
 私は幸せだったよ。
 ずっとずっと居たかったなぁ。
 それはワガママなのかなぁ?



 手の温もりは感じるのに。
 あなたはもう傍にはいないんだね。
 あれからすぐに私達は引き裂かれてしまったよ。
 ずっと、ずっとあなたの傍にいたかったのになぁ。
 仕方ないよね。



 私は幸せになるよ。
 あなたが傍にいないけど。
 私は幸せになるよ。
 きっと、あなたは勝手な人だから、自分のことを忘れろって言わないよね。
 だからいつまでも覚えてるよ。
 だけど、幸せになるよ。
 私の傍には、あなたはいないかもね。
 なんでって?
 なんとなく。私のカンだよ。
 だけど、あなたは願ってくれているでしょう?
 私のことを。
 ずっと。ずっと。


 ねぇ、精市。
 そうだよね。



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2008.7.27

☆コメント
名前変換ございません。次も。
本当にすみません。